12月9日、日本プレスセンター・ホールにおいて、第3回「エクセレントNPO大賞」の表彰式が行われ、約200人の方々が参加しました。
3回目を迎えた今回は、106団体から応募があり、予備審査・本審査の全6工程を経て、栄えある2014年のエクセレントNPO大賞は、「シャプラニール=市民による海外協力の会」に決定しました。
その他、市民賞では「ママの働き方応援隊」、課題解決力賞では「にじいろクレヨン」、組織力賞では「シャプラニール=市民による海外協力の会」がそれぞれ受賞しました。
各賞のノミネート団体は以下の通り。
(1) エクセレントNPO大賞
- 受賞団体: シャプラニール=市民による海外協力の会 ⇒インタビュー
(2) 市民賞
- 授賞団体: ママの働き方応援隊 ⇒インタビュー
- ノミネート団体: アクション / 石巻復興支援ネットワーク / たすけあいの会ふれあいネットまつど / マドレボニータ
(3) 課題解決力賞
- 授賞団体: にじいろクレヨン ⇒インタビュー
- ノミネート団体: スマイリングホスピタルジャパン / 自立生活サポートセンター・もやい / ACE
(4) 組織力賞
- 授賞団体: シャプラニール=市民による海外協力の会 ⇒インタビュー
- ノミネート団体: テラ・ルネッサンス / こどもステーション山口 / 東京コミュニティスクール / 国際ボランティア学生協会 / Teach For Japan
表彰式ではまず、「『エクセレントNPO』をめざそう市民会議」事務局長である工藤(言論NPO代表)が主催者を代表してあいさつを行いました。その中で工藤は、「この『エクセレントNPO』をめざすことで自分たちの非営利組織をより良いものにしていこうという動きが日本に普及することを望む」と述べたうえで、「非営利組織による課題解決への競争が広がり、その中で多くの資源がそこに向って動くという好循環がおこることで、日本の市民社会が強化される」という期待を述べました。
その後、審査委員の紹介、審査方針の説明があり、表彰式が始まりました。
まず、市民賞は、この部門の山岡義典審査委員より講評がなされました。その中で、今回ノミネートされた団体には寄付や参加の在り方にそれぞれの特徴や独自の発想が見られたことが評価された一方、「こうした寄付やボランティアの参加だけでは市民性を評価するのは困難であり、発想の市民性や有償サービスの市民性をどのように現在のエクセレントNPOの評価基準に反映させるか見直す必要がある」と、今後の「エクセレントNPO大賞」の評価基準について、課題も示されました。
ノミネート団体の中でも、「子連れがメリットになる働き方」という視点から、母親だけでなく社会にとってもよい影響をもたらすとの発想から創設された「ママの働き方応援隊」は、市民的で独創的な発想による赤ちゃん先生プロジェクトを行うなど、会員登録と有償サービスの提供による参加性の高い活動として各地に展開しつつあることから、市民賞に相応しい団体と評価され、受賞しました。
「ママの働き方応援隊」の恵夕喜子理事長は、受賞者スピーチにおいて、「日本の母親が自ら生んだ赤ちゃんとともに、仕事を通じて成長する場を提供したいという想いから始まった」と団体設立の目的を述べ、「赤ちゃんとともに働くことができる日本に向けて、活動していきたい」と、今後の活動に向けた意欲を述べました。
課題解決力の講評は、主査を務めた田中弥生審査委員が欠席のため、武田晴人審査委員より代読されました。その中で、各団体にとって改善すべき点は少なくないものの、ノミネート団体をはじめ、高い評価を得た団体は、「取り組む課題を明確に博していること」に加え、「課題の認識を深化させ、それに伴い活動や事業を深化させ、一定の成果を上げている点が、評価されました。
中でも、宮城県石巻市において被災した子供が安心して生活できるよう支援を行う「にじいろクレヨン」は、早期に法人化することで寄付や助成金を確保してしっかりと活動を行っていること、被災地の状況やニーズの変化を見据えて活動内容や方法をうまく刷新していること、そして、ニーズや課題の分析や事業開発力といった非営利組織としての課題解決力に不可欠の力を蓄えていることが評価され、課題解決賞を受賞しました。
「にじいろクレヨン」の柴田礼華事務局長は、「自分たちも被災をして、途方に暮れている中で、自分たちを明るくしてくれたのは子供たちであり、むしろこちらが支えられている」と、これまでの活動を振り返り、「まだまだしなければならないことはたくさんある」とした上で、「この賞を受けたことを原動力に、これからの活動に取り組んでいきたい」と抱負を語りました。
続いて、組織力賞は武田審査委員が講評を行い、その中で、組織力のポイントとして、非営利組織の持続可能性という観点から「広く多様な人々の支援を組織の基盤に持っていることが重視される」と振り返った上で、「審査委員会が組織力賞としてどのような判断基準を明確に応募者に伝わっていなかった」と自省を述べました。
組織力賞ノミネートの6団体のうち、バングラディッシュを中心に、途上国の貧困問題に取り組み、創設42年という歴史を持つ「シャプラニール=市民による海外協力の会」が、総収入に占める寄付金の割合が高いこと、また、ボランティアの参加状況等を勘案した結果、組織として高い安定性を保っていると評価され、組織力賞を受賞しました。
「シャプラニール=市民による海外協力の会」の小松豊明事務局長は、受賞スピーチで、「日々支えてくれる支援者やボランティアのおかげで授賞できた」と喜びを語った上で、「団体の活動をもっとインパクトあるものしていけるよう努力が必要である」とし、「今回の受賞が団体の飛躍のきっかけになれば嬉しく思う」と、今後の活動に向けた意欲を述べました。
最後に、市民性、課題解決力、組織力の3部門において、総合的に優れた団体を表彰する「エクセレントNPO大賞」には「シャプラニール=市民による海外協力の会」が決定しました。田中審査委員による講評は、工藤によって代読され、授賞理由として、ボランティアに対するきめ細やかな対応や寄付方法の多様性、失敗の教訓から学ぶことで新たな事業展開に繋げている点、全国3000人の支援者との定期的な寄付者の基盤を築くと同時に、公的資金への依存度が過度にならないように自ら制限している点などが特に高く評価されました。
改めて授賞者挨拶に立った「シャプラニール=市民による海外協力の会」の小松氏は、「創設42年の歴史の中で、諸先輩方が築いた実績、そして現在の支援者の方々の応援なくして活動はできない」として感謝の念を述べました。その上で、「今回、エクセレントNPO大賞を受賞し、引き続き市民による活動を推進していけるよう努力したい」と決意を述べました。
表彰終了後、小倉和夫審査委員長は総評で、この「『エクセレントNPO大賞』は審査過程を透明にしていることから、審査員が審査されている」ことに加え、「審査基準を自己評価団体がどう解釈するかを考える中で、審査基準が審査されている、という二点で、この賞は極めて特異であるが、意味あるものだ」と述べました。また、既に素晴らしい非営利団体が多く存在していることを述べた上で、この「エクセレントNPO大賞」は「エクセレントになろうと努力するNPOを表彰する賞である」として、日本における今後の非営利組織の成長に期待を示し、挨拶を締めくくりました。