~「市民賞」「組織力賞」「課題解決力賞」「エクセレントNPO大賞」を発表~

「『エクセレントNPO』をめざそう市民会議」(以下、「市民会議」)は2013年12月6日(金)13時から「毎日ホール」(東京都千代田区)において、「第2回エクセレントNPO大賞」の表彰式を行いました。
昨年の表彰では「エクセレントNPO大賞」は選ばれませんでしたが、今年は「難民支援協会」(東京都)が受賞しました。市民賞には「プール・ボランティア」(大阪府)、課題解決力賞には「多文化共生センター東京」(東京都)、組織力賞には「かものはしプロジェクト」(東京都)と「難民支援協会」が選ばれました。

今回の応募には、当初の予想を大きく上回り、全国から173もの団体から応募がありました。この中から市民賞・課題解決力賞・組織力賞の各賞において5団体がノミネートされ、各賞受賞団体および大賞受賞団体が決定いたしました。

今後、市民会議では、受賞団体やノミネート団体らを交え「エクセレントNPO」についてフォーラムを開催する予定です。また、こうした議論を踏まえ、評価基準や説明の見直しや開発を行っていきます。

 

各賞受賞・ノミネート団体一覧

部門賞
受賞団体
ノミネート団体
エクセレントNPO大賞 難民支援協会
市民賞 プール・ボランティア ・多摩草むらの会
・南三陸町復興推進ネットワーク
・子ども劇場千葉県センター
・ゆめ風基金
課題解決力賞 多文化共生センター東京 ・海をつくる会
・3keys
・放射線医療国際協力推進機構
・POSSE
組織力賞 かものはしプロジェクト
難民支援協会
・NPOカタリバ
・環境市民
・国際ボランティア学生協会

 

審査講評について

エクセレントNPO大賞講評

エクセレントNPO大賞は、3つの部門賞受賞者の中から、市民性、課題解決力、組織力について総合的に優れた団体を表彰するものです。

審査委員会は、第2回の「大賞」の受賞団体として組織力賞を受賞した「難民支援協会」を選び、大賞を授与することを決定しました。

「難民支援協会」は、組織力に秀でているだけではなく、日本に逃れてきた難民の支援という比較的注目されにくい社会的な課題の解決に地道に取り組んでおり、寄付やボランティアを通した市民参加の機会を作ることにおいても積極的で堅実な実績を積んでいます。そうした点で総合的に見て大賞に相応しいと判断しました。

 

各部門賞講評

第2回エクセレントNPO大賞については、すべての組織について、情報開示や資金調達の透明性、市民参加のための努力がなされていることを確認した上で、「市民賞」「課題解決力賞」「組織力賞」について審査しました。各受賞団体の講評は以下の通りです。

 

市民賞講評

「市民賞」を受賞したプール・ボランティアは、14年にわたり多様な参加者を巻き込みながら着実に活動を続けている団体です。1200人の市民がボランティアとして障害者や高齢者のプールでの運動をサポートしており、ボランティアの基盤が大きいです。市民性の自己評価の記述にはありませんでしたが、課題解決力の記述には、市民ボランティアの気づきや喜びの姿、ボランティアの自発的な呼びかけでその輪が広がっていることが記されており、参加者の成長の様子を見てとることができました。命に係わる活動だけにボランティアの質の確保が大事になりますが、その研修の仕組みも行き届いています。自己評価は非常に厳しく控え目で、確かに特定の狭い範囲の事業であるだけに組織力の弱さはありますし、また市民性という視点ではさらに広い層からの寄付も今後の課題でありますが、全国に普及してほしい草分け的なモデル的事業として高く評価されました。Webによる広報も分かりよく、財務情報の表示もよく工夫されています。

 

課題解決力賞講評

「課題解決力賞」を受賞した「多文化共生センター東京」は、15歳を過ぎた外国籍の子供たちの教育の問題、不登校、ドロップアウトなどに着目しており、問題の認識の仕方が明確かつ適切でした。子供たちの学就状況や生活状況について実態調査を行い、彼らの問題を体系的に捉えようとしていることがその活動報告や申請書に記された自己評価の内容から伝わってきました。こうした実態調査を踏まえて、自身も外国籍を持つ若者たちを中心に地道に教育支援活動を展開されてきたことが評価されました。また、現場に密着した活動から、我が国の制度や政策の問題に気づき、分析をを行い提言へと発展させています。例えば、1999年の入管法の改正によって外国人が増えながら、彼らへの社会保障制度が整っていないことについて分析を行い、政策提言を行っています。

このように、目前に見える外国籍の子供たちが抱える問題を捉えるだけでなく、その背景にある問題を捉え、自らの課題認識を深め進化させていますが、こうした点が高く評価されました。ただしHP上の情報開示面では、もう少しわかりやすく工夫する余地があると思われます。

 

組織力賞講評

「組織力賞」は、「かものはしプロジェクト」と「難民支援協会」が受賞しました。

「かものはしプロジェクト」は、強制的に子どもが売られてしまう問題を防止する活動を、持続的かつ発展的に行い世界の子どもたちが未来への希望を持って生きられるよう活動しています。資金調達のための事業活動も展開していますが、会費、寄付金の比率も高く収入基盤が安定しています。また、10年を超える歴史の中で、その管理体制も整えられています。「国際性がある点、日本のNPOのモデルとなり得よう」と評価する委員もいたほどです。

「難民支援協会」は、1999年の設立以来、日本に逃れてきた難民が自立した生活を安心して送れるように支援する組織です。法的支援・生活支援・定住支援の三つの支援活動を柱に地道な活動を続けるなかで、組織基盤を固めており、収入基盤が分散されています。また、組織の規律や資金調達のための規律について明確な方針をもっており、この点で日本のNPOの模範となり得るものと思います。

 

全般について

エクセレントNPO大賞は、自己評価を応募条件にするというユニークな方法をとっています。したがって、すべての応募団体が自己評価をしていますが、その内容から自己評価に関する傾向や課題も明らかになりました。第1回に比較し、全て満点として申請された応募団体は少なくなりましたが、満点を記された団体がありました。また、評点の理由に関する説明が不十分なものが多く見られました。すなわち、評点の理由を根拠となるデータや情報をもって説明することが求められます。しかし実際には十分な説明がなされているものは少なかったのです。さらにいえば、自己評価のプロセスで、組織や事業の課題を発見してもらうことも「市民会議」が期待していた点でした。

また、自ら取り組む課題については明確に記している組織は多いのですが、組織の成果や目標の記述になると希薄になるケースは少なくありませんでした。また、組織が掲げる使命に対して、なぜ、現行の活動を実施しているのか、その関係が曖昧なもの、あるいは多くの活動を抱えているために焦点が曖昧になっているものも見られました。自らが目指す成果や目標を明確に設定し説明する力を獲得することは、より戦略的な計画を作り、社会への説得力を身に付けることにつながることから、今後取り組むべき重要な課題であることがわかりました。

 

今後の取り組みについて

「市民会議」では、受賞団体やノミネート団体、そして他のNPOや非営利組織、企業、自治体関係者と、「エクセレントNPO」について広く議論の場を作るべく、フォーラムを開催する予定です。また、応募して頂いた組織のデータや自己評価書から、評価基準や説明に関する課題も明らかになりました。これらの点を踏まえ、今後、評価基準や説明の見直しや開発を行っていきます。

さらに今後、「エクセレントNPO」を目指す宣言団体や運動への賛同者、サポーターの募集などを行い、強い市民社会の形成に向けた動きを強めていく予定です。

 

「エクセレントNPO」とは

1998年のNPO法制定以来、NPO法人の設立数はいまや4.8万団体を超えましたが、数は増えたものの、その大多数は経営的に力が乏しく、社会の自発的な課題解決に取り組む以前に、市民とのつながりが弱く、市民社会を大きく変える力にはまだなっていません。また、不祥事の数が増え、非営利セクターの信頼性を損ねかねません。

「市民会議」では、こうした非営利組織の組織力としての脆弱性や市民とのつながりが希薄である点に当初から問題意識を持ち、その質の競争をもたらし、強く豊かな市民社会への良循環をつくり出すために、非営利の世界での社会変革のモデルとなるNPOの要因分析を続けてきました。そして、三年間にわたる作業の末、2010年には望ましい非営利組織像としての「エクセレントNPO」の概念を打ち出し、「市民性」「社会変革性」「組織安定性」の三つを基本条件とする、組織評価の体系としての「エクセレントNPO」の評価基準を公開し、その普及活動に取り組んできました。

年間大賞の表彰はそうした「エクセレントNPO」を目標にして非営利組織が競い合い、その動きが市民に「見える化」されることで、市民社会に大きな変化を起こすことを目指しています。

 

「エクセレントNPO」をめざそう市民会議について

「非営利セクターに質の競争をもたらし、強く豊かな市民社会づくりへの良循環を作る」ことをミッションとしています。より具体的には、エクセレントNPOの概念を明示し、エクセレントNPOの必要性について問題提起し、そしてその認識を日本社会に広げることを活動目標としています。共同代表には、小倉和夫氏、島田京子氏を迎え、国内外で活躍する数多くのNPO/NGOの代表、研究者約10名をメンバーとしています。

 

受賞・ノミネート団体基本情報

 

 

団体名

概要

市民賞

受賞

 プール・
ボランティア
NPO法人プール・ボランティアは、障がい者が楽しく安全に「水」に親しむことができるように、プールでの支援活動を行う団体。プールでのボランティアがほとんどいない現状を捉え、水泳教師、水上安全法・救急法の指導員、ライフセーバーなどの「水」の専門家が集まり団体を設立する。ボランティアが一対一で水泳の指導などを行う。
【代表者:岡崎寛、設立:1999年、大阪府大阪市】
TEL: 06-4794-8299HP: http://www.pool-npo.or.jp/

ノミネート

南三陸町
復興推進

ネットワーク

一般社団法人南三陸町復興推進ネットワークは、残余財産の帰属を南三陸町とする、復興プロジェクトを運営・サポートする団体。震災直後から現地で活動してきた南三陸町出身の若手によって設立される。「若手世代のコミュニティ再生への貢献」「教育を通じた”まちづくり”への貢献」「新規事業の研究・開発」に関する事業を行う。
【代表者:及川博道、設立:2012年、宮城県本吉郡】
TEL: 0226-25-9350HP: http://www.373net.org/

ノミネート

ゆめ風基金

NPO法人ゆめ風基金は、地震などによる自然災害における被災障害者支援を行う団体。1995年に起きた阪神・淡路大震災を機に発足した。全国の障害者運動と永六輔さん、小室等さんをはじめ各界の方々が呼びかけ人として参加し、自然災害の被災障害者への救援・支援を続けている。
【代表者:牧口一二、設立:1995年、大阪府大阪市】
TEL: 06-6324-7702 HP: http://yumekaze.in.coocan.jp/

ノミネート

多摩草むらの会

NPO法人多摩草むらの会は、福祉の枠を超え社会へ向けて、心の病を持つ精神障がい者が安心して自立した生活できるよう支援事業を行っている団体。デイケアに通う精神障がい者の親の会として設立される。就労支援、自立生活支援、相談支援など、様々な形で支援事業を展開している。
【代表者:風間美代子、設立:1997年、東京都多摩市】
Tel: 042-339-8022 HP: http://kusamura.org/

ノミネート

子ども劇場千葉県センター

NPO法人子ども劇場千葉県センターは、千葉県内の子どもの発達権を保障する生活文化環境づくりする団体。県内の子ども劇場、おやこ劇場が集まり協議組織を立ち上げ設立。舞台芸術・文化・体験活動の普及推進事業、子どもの居場所・社会参画事業、親・家庭を支える子育て支援事業などに取り組んでいる。
【代表者:宇野京子、設立:1988年、千葉県千葉市】
TEL: 043-301-7262HP: http://chiba.gekijou.org/

課題解決力賞

受賞

多文化共生センター東京

認定NPO法人多文化共生センター東京は、国籍、言語、文化の違いをお互いに尊重する多文化共生社会を目指している。特に、教育実態調査、多言語高校進学ガイダンス、「たぶんかフリースクール」の実施・運営など日本語・教科・高校進学支援を通じて、外国にルーツを持つ子どもたちを正規の学校へつなげる活動に力を注いでいる。
【代表者:王慧槿、設立:2006年、東京都荒川区】
TEL: 03-6807-7937HPhttp://tabunka.or.jp/

ノミネート

海をつくる会

海をつくる会は、水環境改善活動(主に海、湖)を推進し、横浜の海がポイ捨てゴミなどで汚れている現状を踏まえ、「身近な海を大切にしたい」という思いからスクーバダイビングを趣味とする有志で設立される。海底・湖底・海浜の清掃や海草「アマモ」場造成、東北震災後の支援活動に取り組んでいる。
【代表者:伊東徹雄、設立:1981年、神奈川県横浜市】
TEL: 045-313-6160HP: http://umikai.sakura.ne.jp/

課題解決力賞

ノミネート

放射線医療国際協力推進機構

認定NPO法人放射線医療国際協力推進機構は、放射線医療者の教育養成や研究・技術協力を支援し、アジア地域の放射線医療の発展に取り組む団体。国際機関の活動が援助を求める人々の要望を満たせていない現状を踏まえ、設立される。新古放射線治療器機の開発途上国への供与、放射線治療に関する技術書の供与などの活動に取り組む。
【代表者:中野隆史、設立:2006年、群馬県前橋市】
TEL: 027-220-8383HP: http://www.joicrm.com

ノミネート

POSSE


NPO
法人POSSEは労働相談、労働法教育、調査活動、政策研究・提言、文化企画を若者自身の手で行う団体。格差問題に問題意識をもった都内の大学生・若手社会人によって結成。相談対応にとどまらず、実態の告発や問題背景の調査研究に取り組み、雑誌『POSSE』を通して発信している。
【 代表者:今野晴貴、設立:2006年、東京都世田谷区】
TEL: 03-6699-9375HP: http://www.npoposse.jp/

ノミネート

3keys


NPO
法人3keysは、全ての子どもが環境によらず十分な教育や支援が受けられる社会を目指している。家庭等による自助や公的支援による公助だけではなく、より多くの大人が子どもたちを支えられるように地域社会に代わる共助再生をめざし、社会資源を子どもたちとつなげ、教育格差の解消に取り組む。研修、講演、執筆等も行う。
【 代表者:森山誉恵、設立:2011年、東京都新宿区】
TEL: 03-5906-5416HP: http://3keys.jp/

組織力賞

受賞

 

難民支援協会
ENPO大賞も受賞】

認定NPO法人難民支援協会は、日本に逃れてきた難民が自立した生活を安心して送れるよう支援する団体。難民のニーズに総合的に「窓口」として対応できる団体がなかったことから設立される。日本で生活している難民への法的・生活支援、コミュニティへの活動や政策提言、調査・研究活動、広報活動に取り組んでいる。
【代表者:中村義幸、設立:1999年、東京都新宿区】
TEL: 03-5379-6001HP: http://www.refugee.or.jp/

受賞

かものはしプロジェクト
NPO
法人かものはしプロジェクトは、「子どもが売られる問題」をなくし、世界の子どもたちが未来への希望を持って生きていける社会を目指す団体。カンボジア、インドで活動を行い、警察支援、コミュニティファクトリー支援、孤児院支援などに取り組んでいる。
【代表者:村田早耶香、設立:2002年、東京都渋谷区】
TEL: 03-6277-2419HP: http://www.kamonohashi-project.net/

ノミネート

国際ボランティア学生協会


NPO
法人国際ボランティア学生協会は、学生の熱意、行動力をもって社会を元気にしていこうとする団体。前身は、国士舘大学で行った「夢企画」をきっかけに、社会の課題解決に取り組みたい学生が集まり設立される。「国際協力」「環境保護」「地域活性化」「災害救援」の4つの分野を軸に活動に取り組んでいる。
【代表者:下村誠、設立:1993年、東京都世田谷区】
TEL: 03-6751-2683HP: http://www.ivusa.com/

ノミネート

NPOカタリバ


NPO
法人NPOカタリバは、「生き抜く力を、子ども・若者へ」を理念に活動している教育NPO団体。教育の「機会」や「環境」による格差を解消できるのかという疑問をきっかけに設立。高校生へのキャリア学習プログラム「カタリ場」と被災地の放課後学校「コラボ・スクール」などの事業に取り組んでいる。
【代表者:今村久美、設立:2001年、東京都杉並区】
TEL: 03-5327-5667HP: http://www.katariba.net/

ノミネート

環境市民

持続可能で豊かな社会・生活を地域から実現することをビジョンに活動に取り組む。日本で初めてグリーンコンシューマー活動を具現化し、グリーン購入法制定への契機をつくった。自治体の環境施策を応援する「環境首都コンテスト」を2001年から10年間実施し、2012年に先進的な自治体やNPO、専門家と連携した環境首都創造ネットワークを創設した。
【代表者:杦本育生、設立:1992年、京都市中京区】
TEL: 075-211-3521HP: http://www.kankyoshimin.org/

 

お問合せ

「エクセレントNPO」事務局(言論NPO事務所内)
TEL:03-3548-0511  FAX:03-3548-0512
E-mail:info@excellent-npo.net
事務局長:工藤泰志
担当:吉崎・宮浦