「市民賞」「組織力賞」「課題解決力賞」「東日本大震災復興支援奨励賞」を発表~
「『エクセレントNPO』をめざそう市民会議」(以下、「市民会議」)はこの度、2012年7月11日(水)13時から毎日新聞社「毎日ホール」において、第1回「エクセレントNPO大賞」の表彰式を行いました。
市民賞にはYouth for 3.11、課題解決力賞には高木仁三郎市民科学基金、組織力賞にはスペシャルオリンピックス日本が選ばれました。東日本大震災復興支援賞は当初1件としていましたが、多様な活動を一つの軸で評価するのは不可能と判断し、応募団体を複数の分類に分けて評価を行いました。その結果、ネットワークオレンジ、遠野まごころネット、MMサポートセンター、ゆめ風基金、セカンドハーベスト・ジャパンの5団体が「東日本大震災復興支援奨励賞」として選ばれました。なお、第1回目のエクセレントNPO大賞は、さらなる発展を期待するという意味から、受賞団体は「なし」となりました。
各賞受賞団体
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今回の応募には、私どもの予想を大きく上回る延べ163団体(本賞116団体、特別賞47団体)からの応募がありました。ここから、市民賞・課題解決力賞・組織力賞の各賞において4団体がノミネートされ、特別賞には5団体がノミネートされ、さらにこの中から第1回「エクセレントNPO」各賞受賞団体が決定いたしました。
各賞ノミネート団体
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審査概要について
エクセレントNPO大賞
今回は第1回のエクセレントNPO大賞ということもあり、大賞の選出において慎重に検討しました。その結果、次回以降、さらなる発展に期待するという意味から、今回は、大賞受賞団体は「なし」となりました。
各部門賞
「エクセレントNPO」大賞については、すべての組織について、情報開示や資金調達の透明性、市民参加のための努力がなされていることを確認した上で、「市民賞」「課題解決力賞」「組織力賞」について審査し、以下のような結果に至りました。また「東日本大震災復興支援賞」については、被災した組織や被災後に設立された組織が多いことに鑑み、組織力などの評価について配慮しました。
市民賞
「市民賞」を受賞した組織は、「参加」と「成長」の意味を深く理解し、それを活動に反映し、一定の成果を出していることが高く評価されました。すなわち、ボランティアに参加しやすい機会を提供するだけではなく、参加した人々の成長を促すために、振り返りや発表の機会を設け、それを次の事業展開につなげているという点です。
「Youth for 3.11」は、東日本大震災の被災地でボランティアとなる上での障害をひとつひとつ取り除き、学生が被災地のボランティアとして活動できる機会を作り1万人以上の学生を被災地に送り込んでいます。また、ボランティア活動から戻った学生たちに対して、「リフレクション」という振り返りの機会を作り、被災地での活動を通じて感じたことや疑問について話し合う場を通じて、学生たちが自らの経験を咀嚼し成長の糧とするための支援を行っています。また、こうした場から、新たな複数の学生ボランティア団体が生まれていることも、本団体の活動成果といえるでしょう。
課題解決力賞
「課題解決力賞」を受賞した組織は、自らが取り組む課題を明確に把握していることは無論のこと、課題の認識を進化させ、それに伴い活動や事業を進化させ、一定の成果を上げているという点が高く評価されました。また、新たな活動に着手すると、知らぬうちに組織の使命や目的から逸脱し、事業構成が散漫になり焦点がぼけてしまうことがあります。しかし、受賞団体は活動を進化させながら、その使命をよりシャープなものにしているといえるでしょう。
「高木仁三郎市民科学基金」は、原子力問題に関する情報を市民向けにわかりやすく提供し、問題提起した科学者高木氏の活動を原点としています。こうした活動の過程から、市民科学者というコンセプトを生み出し、社会に広げました。同基金はこのコンセプトのもとに、広く寄付を募り、市民による科学調査や研究を支援するための助成活動を行ってきました。地道な活動を通じて、市民科学者というコンセプトはより鮮明になっています。今日、科学技術政策などで話題になっている科学コミュニケーションの先駆的な試みといえるでしょう。この先駆性の意義は、福島原発事故以後の活動によって、一層顕著になりました。
組織力賞
「組織力賞」を受賞した組織は、使命や目的の明確性、情報開示、意思決定機関、資金調達の透明性、収入の多様性などがバランスよく整っていることから、その総合力が評価されました。
「スペシャルオリンピックス日本」は、スポーツ競技会やトレーニングの場を通して、知的障害者の自立と社会参加をめざしています。1994年の創設以来、アスリート、ボランティアや寄付者など多くの市民に支えられていますが、こうした市民の支援を得るために、使命と目的を明確に伝え、情報開示や資金調達の透明性をもって説明責任を果たすための努力が着実になされています。
東日本大震災復興支援賞
本賞対象者は、当初1件の予定でしたが、5件の奨励賞を設けることにしました。理由は、東日本大震災の被災地では多様な組織が活動しており、これをひとつの軸で評価することは難しいと判断したからです。そこで、被災前より活動していた組織と被災後より開始した組織、被災地の組織と被災地外からの応援組織など、いくつかの分類軸にもとづき、審査対象団体を区分し、その特徴を明確にした上で5つの組織を選びました。
「ネットワークオレンジ」(宮城県)、「MMサポートセンター」(福島県)は、被災の中から立ち上がった逞しい活動内容や情報発信の活発さが高く評価されました。「遠野まごころネット」(岩手県)は、救援・復興活動の後方支援において圧倒的な強みを発揮した点が評価されました。また、被災地外から応援部隊として活動した組織として、「ゆめ風基金」は、組織力、戦略性、現地団体とのネットワーク力という点で高く評価されました。同じく、「セカンドハーベスト・ジャパン」は、米国での経験を日本社会に定着させた実績をいかし、被災地で幅広い救援活動を行ったこと、活発な情報発信を行ったことが高く評価されました。これら2つは震災前から活動している団体ですが、今回は震災後に立ち上がった被災地外の各地の団体からも、市民性あふれる魅力的な応募が多数寄せられました。しかし今後の復興期の活動を見据えた場合の組織の持続性などで見通しの立ちにくいものが多く、残念ながら賞の対象には残りませんでした。
全般について
エクセレントNPO大賞は、自己評価を応募条件にするというユニークな方法をとっています。したがって、すべての応募団体が自己評価をしていますが、その内容から自己評価に関する傾向や課題も明らかになりました。例えば、オール5、すなわち全て満点として申請された応募団体は少なくありませんでした。大賞への応募ですので、高い評点をつけてアピールしようとする心理が働いたものと思われます。しかし、本審査では自己評価の適切性が重視されました。また、評点の理由に関する説明が不十分なものが多く見られました。すなわち、評点の理由を根拠となるデータや情報をもって説明することが求められます。しかし実際には十分な説明がなされているものは少なかったのです。さらにいえば、自己評価のプロセスで、組織や事業の課題を発見してもらうことも「市民会議」が期待していた点でした。
また、自ら取り組む課題については明確に記している組織は多いのですが、組織の成果や目標の記述になると希薄になるケースは少なくありませんでした。自らが目指す成果や目標を明確に設定し説明する力を獲得することは、より戦略的な計画を作り、社会への説得力を身に付けることにつながることから、今後取り組むべき重要な課題であることがわかりました。
受賞団体基本情報
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今後の取り組みについて
「市民会議」では、受賞団体やノミネート団体、そして他のNPOや非営利組織、企業、自治体関係者と、「エクセレントNPO」について広く議論の場を作るべく、今秋を目途にフォーラムを開催する予定です。
また、応募してくださった組織のデータや自己評価書から、評価基準や説明に関する課題も明らかになりました。これらの点を踏まえ、今後、評価基準や説明の見直し、成果目標の設定や測定手法の開発も行ってゆきたいと思います。
「エクセレントNPO」とは
1998年のNPO法が制定以来、NPOの設立数はいまや4万団体を超えましたが、数は急増したものの、その大多数は経営的に力が乏しく、社会の自発的な課題解決に取り組む以前に、市民とのつながりが弱く、市民社会を大きく変える力にはまだなっていません。
「市民会議」では、こうした非営利組織の組織力としての脆弱性や市民とのつながりが希薄である点に当初から問題意識を持ち、その質の競争をもたらし、強く豊かな市民社会への良循環をつくり出すために、非営利の世界での社会変革のモデルとなるNPOの要因分析を続けてきました。そして、三年間にわたる作業の末、2010年には望ましい非営利組織像としての「エクセレントNPO」の概念を打ち出し、「市民性」「社会変革性」「組織安定性」の三つを基本条件とする、組織評価の体系としての「エクセレントNPO」の評価基準を公開し、その普及活動に取り組んできました。
年間大賞の表彰は、そうした「エクセレントNPO」を目標にして非営利組織が競い合い、その動きが市民に可視化されることで、市民社会に大きな変化を起こすことを目指しています。
「エクセレントNPO」をめざそう市民会議について
「非営利セクターに質の競争をもたらし、強く豊かな市民社会づくりへの良循環を作る」ことをミッションとし、エクセレントNPOの概念を明示し、エクセレントNPOの必要性について問題提起し、そしてその認識を日本社会に広げることを活動目標としています。共同代表には、國松孝次氏、小倉和夫氏、島田京子氏を迎え、国内外で活躍する数多くのNPO/NGOの代表、研究者10名をメンバーとしています。
お問合せ
「エクセレントNPO」事務局(言論NPO事務所内)
TEL:03-3548-0511
FAX:03-3548-0512
E-mail:info@excellent-npo.net
事務局長:工藤泰志
担当:吉崎・宮浦